南の島のよくカニ食う旧石器人
「南の島のよくカニ食う旧石器人」 藤田 祐樹 岩波書店 1300円+税
洞窟調査のため、生命保険に加入し、身動きのとれない岩の隙間に体をねじ込み、水の流れる洞窟を口だけ出して進んだり、ロープにぶら下がって60mも地下に降ろされる羽目になりながらの沖縄での9年間を、著者のユーモラスな語り口から想像するには無理がある。
空気の動かぬ洞内で自分から出る熱気が体にまとわりつき、したたる汗も乾くことなく、次第に暑さと息苦しさを覚えてくる。それでも、化石が見つかる楽しさに夢中になって調査を続けた著者の姿が目に浮かぶと言いたいところだが、一般の読者には無理がある。
しかし、ユーモアあふれる本著を読まずにいるのにも無理がある。
人類学・考古学に関心がない方々も、無理を承知で読んでほしい本だ。
本の内容に入ろう。
南の島のよくカニ食う旧石器人とは、沖縄のサキタリ洞で3万5千年前から1万3千年前ごろまで、秋にはモクズガニを食べながら生き続けた人々のことである。
沖縄県立博物館・美術館人類学担当学芸員の著者らによる、サキタリ洞での発掘調査の成果を中心に紹介されている。今では、サキタリ洞が考古学・人類学のホットスポットの一つであると言われるようになったのも、著者らによって教科書に載るような発見が相次いだことによるものである。
国内最古の「石器と人骨のセット」出土2011年、世界最古の「釣り針」出土2012年、国内最古の「貝器」出土2014年、国内最古の「埋葬人骨」出土2014年などがそれである。
著者に言わせると「旧石器人とその生活痕跡を探すなら、沖縄の洞窟へめんそーれ」なのだ。
関連本として「サキタリ洞とその隣人たちー港川人はサキタリ洞に来たのかー」(2018、新星出版)を紹介しておく、「南の島のよくカニ食う旧石器人」 の読後、無理なく読めるはずだ。
『最古』最高!サキタリ洞
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