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2014年02月08日

鼻は高かった! 白保竿根田原洞穴人

白保竿根田原洞穴遺跡の講演会が平成26年1月25日(土)、沖縄県立埋蔵文化財
センターで開催された。会場は、ほぼ満席。開場前から行列ができていた。

注目の「頭骨復元プロジェクト」は進行中であり、3年後「デジタル技術で補足した旧石器時代人の頭の復元」が見られると言う。また、同時期に別チームによる「遺伝子を使った顔の復元図」が登場しそうだ。

どちらも、港川人に次ぐ旧石器時代人の顔の復元となる。

主催者と講演者の気になる話をピックアップした。

○松浦 秀治(日本人類学会会長・お茶の水女子大教授)

・アルカリ性土壌は、骨(炭酸カルシウム)は残りやすいがアルカリが強すぎると有機物(コラーゲン)は溶けやすい。白保の土壌では、骨と有機物が保存されている。

 白保竿根田原洞穴遺跡から出土した古人骨の同位体分析
 米田 穣(東京大学総合博物館教授)

・白保竿根田原洞穴には、年代較正によると約2万8千年前から人が住み着いた可能性が あり、1万5千年ぐらい継続したが、その間に2度の空白がある。一度目は、約1万2千年前。洞穴を引っ越したのか、絶滅したのかも知れない。

・白保竿根田原洞穴遺跡に暮らした人々は、意外にも海産物をあまり利用しなかった。  

・石垣島は大陸と地続きなることはなかったので、100㎞以上を渡海したことになる。

白保竿根田原洞穴遺跡出土に人骨について
土肥 直美(琉球大学)

・2~3年後には、白保竿根田原洞穴遺跡出土の人骨から、デジタル(解析)で顔の復元ができると思う。

・大腿骨から推測される身長は、同時期の港川人(約153㎝)と比較して約160㎝の長身。

・葬られていた人骨は、すべて成人(男性8、女性3、不明1)で子どもの骨は見つかっていない。

・上腕骨の緻密質の厚さが現代人の2倍。

・質疑応答で「(復元中の)顔の鼻が高い。」と言った後、慌てて手で口をふさいでいた。(鼻が高いのは本当らしい。が、もう少し口を滑らしてほしかった。)

白保竿根田原洞穴遺跡出土の人骨のDNA分析
篠田 謙一(国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ長)

・ハプログループとは、ミトコンドリアDNAが母親から子に伝えられ人の移動により
世界中 に拡散していった過程で突然変異によりできた新しいタイプ。

・ハプログループ「M7a」は、日本以外ではほとんど存在せず、現在の日本の中で
は、沖縄 に多い(4人に一人)。

・白保竿根田原う洞穴遺跡出土の人骨から、ハプログループ「M7a」を持つものが10体中3体あった。(再実験の結果が不安定であることから、白保竿根田原洞穴
遺跡に暮らした人々は、現在の日本人(沖縄人を含む)と遺伝的に連続性があるとは、まだ断定できないようだ。)

・遺伝子情報からも顔の復元は可能であり、形態学的分析とあわせればよりリア
ルな白保竿根田原洞穴遺跡出土人骨の顔の復元ができるのではないかと考える。

・3年後ぐらいには、遺伝子を使った顔の復元図を出してみたい。


関野 吉晴の旅の紹介・海洋民の生活
関野 吉晴(探検家・医師:武蔵野美術大学教授)

・最初は、人は好奇心や向上心で移動すると思っていたが、弱い立場の人が押し出されて移動するのではないかと考えるようになった。

・島伝いに来て、たまたま、日本に来た人がいたのではないか。

こちらから関野吉晴の公式サイト行けます。
  
追 伸
教科書に載るような発見の相次ぐサキタリ洞南城市、玉泉洞の道向い)のこと、どのぐらいご存知ですか。

国内最古の「石器と人骨のセット」出土     2011年

世界最古の「釣り針」出土 2012年

国内最古の「貝器」出土 2014年

国内最古の「埋葬人骨」出土 2014年

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鼻は高かった! 白保竿根田原洞穴人

 白保竿根田原洞穴遺跡出土の人骨のDNA分析
 篠田 謙一(国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ長)の続きです。

・「M7」の起源地は、3万年ぐらい前、今は海底に沈んでいる地域(黄海から東

シナ海)であり、そこから拡散したと仮定すると、2万年前の白保竿根田原洞穴

遺跡の人骨から、このハプログループ「M7a」が見つかるのは常識的なもの。

※ハプログループ「M7」には、「M7a」、「M7b」、「M7c」のサブグループがある。

詳しくは、「日本人になった祖先たち」 篠田 謙一著 NHKブックスをご参照下さい。



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